ぷくぷくです。今回のおすすめまんがは藤子・F・不二雄(F先生とよんでいます)の『SF短編PERFECT版』です。
『ドラえもん』でおなじみのF先生。短編もかなりたくさん書かれてます。ただその内容がなかなかに衝撃的なことをご存じでしょうか?刺激が欲しいなら間違いない作品になっています。
この短編集は全話オチのおもしろさ重要なので、あらすじを書くと楽しみがなくなってしまいます。何とか内容にふれずにおすすめする理由を説明していこうと思います。
刺激がほしい人
最初のおすすめ理由ですが、とにかく言いたいことはこの短編集は刺激が強いということ。
世界観こそ様々な作品がありますが人間の本質を上手に書いてあるお話ばかりです。その本質がまた人間の情けない部分だったり弱い部分だったり醜い部分だったりとマイナスの面を見せられる作品が多いことが印象的です。
よく話題にされるのが名作中の名作『ミノタウロスの皿』。この作品はF先生が大人むけ短編を書き始めたきっかけになったものですが、これが本当に怖いというか悲しいというか苦しいというか…。
善悪なんて立場によって変わる、正常とか異常なんて実は紙一重、そんな何ともいえない気持ちで最後の一コマを読むことになると思います。
ほかにも有名といえば4巻『カンビュセスの籤』などがありますが(名作です)特に怖い作品をあげるとすれば2巻『コロリころげた木の根っ子』。これはヤバいです。少し昭和を感じはしますが、私はミステリーかホラーを読んだような読後感になりました。ゾッとしたい人はぜひ読んでほしいお話。
その他の作品も一癖も二癖もあるものばかり。オチの秀逸なものばかりです。シリアス展開だったのにいきなりコミカルに終わったり、逆にコミカルな感じで楽しく読んでいたらオチでえらい怖かったり。かわいい絵の感じで楽しく読んでいたけどよくよく考えたらこれホラーやん…、みたいな作品もあります。
特に1・2巻は毒の強いものが多いような気がします。気になる方はいきなり全巻を買うのではなく、最初の1・2巻をまず読んでみると好き嫌いがはっきりして良いのではないでしょうか。
もちろんきつい内容ばかりではなく、優しい作品やコミカルで楽しい作品もあります。掲載した雑誌が子供向けか大人向けかで内容や雰囲気も大分かわっているようです。
ここまではこの『SF短編PERFECT版』の刺激がほしい人へのおすすめ理由を解説してみましたが、次はこの作品の空き時間に何か読みたい人へのおすすめ理由を書いていこうと思います。
空いた時間に何か読みたい人
2つめのおすすめしたい人は空き時間に何か読み物が欲しい人です。
その理由ですがこれはそのままで、短編集だから読む時間を気にしないでいつでも読めるといういこと。
これは全ての短編集にいえることですが、1話完結の話ばかりなので読むことにそこまで時間がかかりません。
しかもまんが特有の読みやすさも加わって、読む時間は更に短縮されていきます。
ざっくりですが1話20~30ページくらいのお話が大半です。人によって読む速度は違いますが、それでも10分くらいで1話読めてしまいます。短いお話なら5ページのものもあったりします。
さらに読みやすい理由がもう一つあって、それは『ドラえもん』でおなじみ児童まんがのスペシャリストのF先生の短編だということ。
どういうことかというと、児童まんがは読みやすさがとても大事です。知識や経験があまりない子供でも絵や会話文だけで理解してもらわないといけないからです。F先生の短編は絵の説得力やストーリーのテンポ、コマ割りの見やすさなどいろいろな工夫があって何もつまずかずに1話を読み切ってしまいます。
読みやすさ以外でも一つあります。じつはkindle版もでているそうです。ぷくは本を持っているので読みたいときは直接カバンに入れて持ち運びをしていましたが、やはりこれは少し大変。kindle版があるのならスマホやタブレットがあればどこでも読めますので、これから読んでみようと思った人はそっちもアリだと思います。
ここまで空き時間に何か読みたい人へむけておすすめの理由を書きましたが、最後に少し違う方向性で星新一さんの『ショートショート』が好きな人へおすすめをしてみたいと思います。
星新一『ショートショート』が好きな人
3番目におすすめしたい人は、星新一さんの『ショートショート』が好きな方です。
おそらくこの見出しでこの文を読んでいるという人は『ショートショート』をご存じだと思います。なのであまり説明はしませんが、SF短編小説のとんでもなくすごい人と思ってもらえれば間違いないです。
F先生と星さんは作風が似ています。初めて『ショートショート』を読んだとき、コミカルな雰囲気やテンポの良さに毒・風刺がきいたオチに驚いたことを覚えています。そしてそれはそのままF先生のSF短編を読んだときにも感じたことでした。
ほぼ同時代を生きた二人(星新一 1926-1997)、(藤子・F・不二雄 1933-1996)がお互いを意識していたかはわかりませんが、まんがと小説という表現の違いはあっても、人間の本質をおもしろおかしく短編という形で表現していくうちに、同じような作風になっているのがとても興味深いですよね。
もし『ショートショート』が好きな人でまだF先生の短編を読んだことがないのであれば一読の価値はあると思います。
次は各巻の目次とおすすめの話をご紹介します。
各巻目次とおすすめ1話
- 1巻目次
- スーパーさん
- ミノタウロスの皿
- ぼくのロボット
- カイケツ小池さん
- ボノム=底ぬけさん=
- ドジ田ドジ郎の幸運
- じじぬき
- ヒョンヒョロ
- 自分会議
- わが子・スーパーマン
- 気楽に殺ろうよ
- アチタが見える
- 換身
- 劇画・オバQ
- イヤなイヤなイヤな奴
1巻のおすすめは『ミノタウロスの皿』。F先生の代表作であり間違いなく後世に残る傑作と言って良いと思います。
- 2巻目次
- 休日のガンマン
- 定年退食
- 権敷無妾付き
- ミラクルマン
- ノスタル爺
- コロリころげた木の根っ子
- 間引き
- 箱舟はいっぱい
- アン子 大いに怒る
- やすらぎの館
- ポストの中の明日
- どことなくなんとなく
- ボクラ共和国
2巻おすすめは『コロリころげた木の根っ子』。最後の1ページの恐怖をぜひ味わってください。
- 3巻目次
- なくな!ゆうれい
- 3万3千平米
- ひとりぼっちの宇宙戦争
- 分岐点
- ボクのオキちゃん
- 世界名作童話
- ウルトラ・スーパー・デラックスマン
- T・Mは絶対に
- 幸運児
- 一千年後の再会
- おれ、夕子
- 大予言
- 老雄大いに語る
- 光陰
- 俺と俺と俺
- 女には売るものがある
- みどりの守り神
- 耳太郎
3巻おすすめは『ウルトラ・スーパー・デラックスマン』。力を持った人間はどうなるのか、考えさせられる作品です。
- 4巻目次
- カンビュセスの籤
- ユメカゲロウ
- 考える足
- オヤジ・ロック
- 宇宙人レポートサンプルAとB
- ぼくは神様
- スタジオ・ボロ物語
- 未来ドロボウ
- 宇宙人
- あのバカは荒野をめざす
- 老年期の終り
4巻おすすめは『カンビュセスの籤』。この作品も間違いない傑作。本当にせつない、でも悲しいだけでなく優しさにあふれたラストシーンは必読です。
- 5巻目次
- 並平家の一日
- ぼくの悪行
- うちの石炭紀
- 流血鬼
- ベソとコタツと宇宙船
- ふたりぼっち
- 影男
- 宇宙製造法
- 山寺グラフィティ
- マイ・ロボット
- メフィスト惨歌
5巻おすすめは『メフィスト惨歌』。じつはぷくが初めて読んだ思い出深い短編でもあります。ちょっと可哀そうなサラリーマン悪魔?を楽しんでください。
- 6巻目次
- 恋人製造法
- 創成日記
- 神様ごっこ
- パラレル同窓会
- 四畳半SL旅行
- あいつのタイムマシン
- 街がいた‼
- いけにえ
- 征地球論
- コマーさる
- 絶滅の島
- 超兵器ガ一號
- クレオパトラだぞ
6巻おすすめは『超兵器ガ一號』。緊迫感のある展開からまさかのオチ。こういう予想外な展開がくるから気をぬけません。
- 7巻目次
- かわい子くん
- テレパ椎
- ニューイヤー星調査行
- 旅人還る
- 白亜荘二泊三日
- タイムカメラ
- 福来たる
- ミニチュア製造カメラ
- 値ぶみカメラ
- 同録スチール
- 求む!求める人
- タイムマシーンを作ろう
- 夢カメラ
- ある日……
- 倍速
- コラージュ・カメラ
7巻おすすめは『旅人還る』。これぞSF短編といった壮大なストーリー。この短編集は毒のある作品が多いのですが、こういった正統派のSFも楽しめるのがさすがです。
余談ですが、7巻は巻末にF先生の長女の匡美さんのあとがきが掲載されています。匡美さんのあとがきは1巻についで2回目です(全巻末に作者と親交のあった方のあとがきが掲載されている)。
ぷくはこの7巻のあとがきがとても好きです。
匡美さんとF先生との親子のやりとりの中で、先生のまんがに対する考え方が見えてきます。ファンなら一読の価値があると思います。
- 8巻目次
- 懐古の客
- 四海鏡
- 昨日のオレは今日の敵
- 侵略者
- 親子とりかえばや
- 宇宙からのおとし玉
- 殺され屋
- マイホーム
- 丑の刻禍冥羅
- マイ・シェルター
- 鉄人をひろったよ
- 裏町裏通り名画館
- 有名人販売株式会社
- 異人アンドロ氏
- 絶滅の島
8巻おすすめは『昨日のオレは今日の敵』。
『ドラえもん』の有名なお話『ドラえもんだらけ』はご存じでしょうか?(やろうぶっ殺してやる のアレです)。推測ですがその元ネタかも?そんなことも知ってたらさらに楽しく読めるお話です。